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機械翻訳サービスDeepLの高評価はヨーロッパ言語間の結果

翻訳者の SNS で Forbes 日本版での DeepL の記事が話題となっているようだ。
記事のリンクは次の通り。
forbesjapan.com/articles/detail/45199

記事では PDFファイルの翻訳など、便利な新機能についても紹介している。
それはここでは触れないので、リンク先の記事を読んでほしい。

興味があるのは翻訳精度だ。
機械翻訳後の修正作業、つまりポストエディットは絶対に必要だが、その修正量が少なければ、大量の文書を読むときにストレスは減る。

記事中では、他の機械翻訳サービスとの比較が示されている。
翻訳者を対象にしたブラインドテストで、テストしたすべての言語ペアで DeepL が高評価だったという。

それで気を付けてほしいのは、示された言語ペアは、どれもヨーロッパ言語間であることだ。
日本語とのペアでどうなるかは全く不明である。
英日や独日などでも、DeepL の方が優秀かもしれないと期待してもよいが、きちんとした検証結果を待たねばならない。

DeepL は大量の対訳データベースで学習しているようで、EU の大量の翻訳資産を使えば、加盟国の公用語間で精度を上げてゆくことは可能だろう。

ただ、学習に使う英日ペアの対訳データベースがまともであるかどうかが気がかりだ。
なんでもかんでも読み込めばよいというわけではない。

特許の機械翻訳の会合でも、特許庁に出願された和訳であっても、誤訳の有無を再チェックしないと使えないと指摘があった。
私が専門の化学でも、今では絶対に使わない用語を平気で使い続けている出願人もいるので、困っているし。

それに加えて、英語以外の場合、間に英語をはさんだ二段階翻訳だと思われるので、エラーが増加するリスクがある。
独日翻訳の場合、いくら独英ペアが優秀でも、英日ペアの精度が低ければ修正量が増えてしまうだろう。

ということは、ドイツ語やフランス語などを日本語ではなく、英語に翻訳させて、自分ではその英訳を読んで内容把握するのが安全ではないか。

それでも、その英訳が正しいという前提なので、とんでもない誤訳を見逃してしまうリスクは残る。
やはり最終的には、人間の翻訳者が各ステップに関与しないといけないのではないか。

人間もミスするのだから、機械翻訳のエラーばかりを批判はできないかもしれない。
ただ、仕事で使えると鵜呑みにした人たちが増えると、ポストエディットすらしなくなり、とんでもない損失を被る事態を招きそうだ。

とりあえず、個人的な興味の範囲で、記事に何が書いてあるのか概要を知りたいときに試すだけにしておきたい。
責任が伴う業務に使うのは避けたいものだ。

テーマ : 語学の勉強
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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