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「研究者大量雇い止め」の必然(東洋経済 2022年11月12日号)

岸田首相は昨年10月の所信表明演説で、「成長戦略の第一の柱は、科学技術立国の実現」であることを表明した。
以前は「科学技術創造立国」と言っていたと思うが、どう呼ぼうと、今の日本ではとうてい実現できないのでどちらでもよい。

これまでも人材育成のために奨学金などの拡大や、大学発ベンチャーの支援、競争的資金の増額など、様々な施策が講じられてきた。
ただ、手を変え品を変えても根本的な問題を先送りしているだけなので、何も変わらない。

ノーベル賞受賞者や最先端技術を持つ企業など、ベストケースだけを取り上げて「日本はすごい」と浮かれている国なので、これからも没落に向かって確実に進んでゆくだろう。

最近も新聞などで、ポスドクの苦境や理化学研究所での大量雇い止めについて報じられることが目立っているように思う。
そして今日発売の東洋経済2022年11月12日号には、日本の研究力が危ない! 「研究者大量雇い止め」の必然 が掲載された。

研究者の場合、特例で有期雇用契約は10年間まで可能で、一般労働者の5年よりも2倍も長い。
研究に専念できる期間を長くして、その間に成果をあげてほしいということのようだ。
10年後に無期雇用への転換申込権が生じるのだが、財源が足りないなどの理由で、大量に雇い止めとなるおそれがある。

雇い止めをしないように周知徹底したそうだが、無期雇用するための財源がないのに無理な話だ。
文科省も含めて当事者意識は薄く、研究職を目指した自分がバカだったと後悔するだけなのか。

トラックバックした記事でも取り上げたように、理化学研究所の雇い止め問題が解決できないならば、日本は基礎研究を重視しない国であると宣言しているようにも思える。

大学人事の場合、専門分野が違うのに学科長の弟子が採用されたり、多額の寄付をした企業の社員が採用されるなどの不思議な人事もあり、優秀な人材が応募しても不採用となることがある。

運営費が減少している大学のポストは増えないと思うし、科学技術立国を実現したければ、国立研究所の拡充と、自由な研究環境の保証をする方が早いと思う。

旅行支援などでばらまく予算があるのなら、基礎研究につぎ込めば、人類の未来を救う国になれると思う。
コロナワクチンを開発できない国のままでもよければ、目先の利益のみを求めて、問題先送りをしていればよい。

研究職を辞めて私のように、特許翻訳業界に入ってくる人はいるだろうか。


私が博士後期課程に進んだ頃、「アメリカ並みに博士を増やせば日本はよくなる」と言っていた人がいた。その後、博士取得者やポスドクの就職先が足りないという問題が深刻になった。そうするとその人は、「私も3年くらい無職のようなものだった。がんばれ」と言った。私は博士の3年間に奨学金と研究費をもらい、2年間のドイツ留学では年間約450万円支給されて、それ以前と比べれば優遇されていた。そして帰国後にポスドクを2年...
冷遇されるポスドク(神戸新聞NEXT 2022年04月21日)


テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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