「Kinder unter 5 Jahren」は「5歳未満児」なのかそれとも「5歳以下児」なのか
趣味で外国語の資料をざっと眺めるだけならば気にならないが、翻訳となると単語の基本的な意味について、慎重になることが多い。
翻訳の場合は、私の和訳を読む人は、翻訳対象の外国語がわからないという前提だから、もし誤訳をしてしまったり、あいまいな点があると、そのまま誤解される危険性が高い。
今回取り上げる 「以下」 と 「未満」 も、日本語でも問題になることが多い表現だ。
現在読んでいるドイツ放射線防護委員会(SSK)の報告書でも、この問題が出てくるので再度考えた。
"Kinder unter 5 Jahren" を私は 「5歳未満児」 と理解していて、過去の投稿記事もそうしている。
しかし、ドイツ原発周辺での小児白血病疫学研究(KiKK研究)に関する日本語記事を探してみると、同じドイツ語を和訳しているはずなのに、「5歳未 満」 と 「5歳以下」 の両方があった。
中には同じ記事中で、「5歳未満」 と 「5歳以下」 が混在しているものさえあった。
私はまだプロの翻訳家とは言えないので、他者の表現を見て、自信がなくなることもある。
他者の和訳を批判するのではなく、自分の知識を確認するために再調査した。
結論から先に言うと、 「5歳未満児」 が正確な表現だと、私は考えている。
unter の意味を考えなくても、報告書の中では、「5歳の誕生日までに白血病を発症した小児」 という表現があるから、このことからも 「5歳未満児」 が適切だろう。
日常生活では 「以下と未満の区別」 はあいまいなこともあり、なんとなく文脈で解釈するが、法律や科学分野で数字を扱う場合は、「以下はその数を含み、未満はその数を含まない」 と定義する。
まずは日本語について、広辞苑第六版で 「以下」 と 「未満」 の語義解説を確認してみた。
未満:その数に達しないこと。「1円未満切捨て」 「18歳未満は立入禁止」】
それでは、ドイツ語で unter はどのような概念なのだろうか。
DUDEN では、「ある特定の値などを下回っていること」 だから、「未満」 と考えるのが妥当だろう。
【unter: 1. (räumlich) g) ‹mit Akk.› kennzeichnet ein Absinken, bei dem ein bestimmter Wert, Rang o. ä. unterschritten wird: u. null sinken】
ただ、独和辞典や、日本語で書かれた文法書の解説を読んだだけでは、混乱してしまうようだ。
三修社の 「現代ドイツ語文法」 では、「あるものより下回る分量」 とあるが、次に示すように例文では 「以下」 という訳語としている。
【Er suchte ein Hotelzimmer unter zehn Mark. 彼は10マルク以下のホテルの部屋を探していた。】
大修館書店の 「マイスター独和辞典」 では両方示していて混乱してしまうが、例文では未満だ。
【unter: 3. a 〔+3格〕((数量)) …以下の[で],…未満 Kinder unter sechs Jahren 6歳未満の幼児。】
いつも使っている小学館の 「独和大辞典」 では、「未満」 という意味だけ例示。
【unter: 前 1 ((空間的)) b) ((未満;数量的上限に関して)) ((3格と)) (weniger als) …に達しない数の,数値的に…未満で,…に達しない Kinder unter zehn Jahren 10歳未満の子供】
報告書ではやはり、数値を厳密に取り扱う必要があるため、「5歳未満児」 が正しいと思う。
前置詞1つで迷っているくらいだから、まだまだプロの翻訳家には道のりは長い。
まあ、言葉に敏感であるという、ポジティブな解釈をしておこうか。
(最終チェック・修正日 2008年10月28日)
"Kinder unter 5 Jahren" を私は 「5歳未満児」 と理解していて、過去の投稿記事もそうしている。
しかし、ドイツ原発周辺での小児白血病疫学研究(KiKK研究)に関する日本語記事を探してみると、同じドイツ語を和訳しているはずなのに、「5歳未 満」 と 「5歳以下」 の両方があった。
中には同じ記事中で、「5歳未満」 と 「5歳以下」 が混在しているものさえあった。
私はまだプロの翻訳家とは言えないので、他者の表現を見て、自信がなくなることもある。
他者の和訳を批判するのではなく、自分の知識を確認するために再調査した。
結論から先に言うと、 「5歳未満児」 が正確な表現だと、私は考えている。
unter の意味を考えなくても、報告書の中では、「5歳の誕生日までに白血病を発症した小児」 という表現があるから、このことからも 「5歳未満児」 が適切だろう。
日常生活では 「以下と未満の区別」 はあいまいなこともあり、なんとなく文脈で解釈するが、法律や科学分野で数字を扱う場合は、「以下はその数を含み、未満はその数を含まない」 と定義する。
まずは日本語について、広辞苑第六版で 「以下」 と 「未満」 の語義解説を確認してみた。
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【以下:程度・数量などについ て、それより少ない、または劣っていること。法律・数学などでは、基準の数量を含みそれより下。 「1万以下」 「平均以下の成績」未満:その数に達しないこと。「1円未満切捨て」 「18歳未満は立入禁止」】
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それでは、ドイツ語で unter はどのような概念なのだろうか。
DUDEN では、「ある特定の値などを下回っていること」 だから、「未満」 と考えるのが妥当だろう。
【unter: 1. (räumlich) g) ‹mit Akk.› kennzeichnet ein Absinken, bei dem ein bestimmter Wert, Rang o. ä. unterschritten wird: u. null sinken】
ただ、独和辞典や、日本語で書かれた文法書の解説を読んだだけでは、混乱してしまうようだ。
三修社の 「現代ドイツ語文法」 では、「あるものより下回る分量」 とあるが、次に示すように例文では 「以下」 という訳語としている。
【Er suchte ein Hotelzimmer unter zehn Mark. 彼は10マルク以下のホテルの部屋を探していた。】
大修館書店の 「マイスター独和辞典」 では両方示していて混乱してしまうが、例文では未満だ。
【unter: 3. a 〔+3格〕((数量)) …以下の[で],…未満 Kinder unter sechs Jahren 6歳未満の幼児。】
いつも使っている小学館の 「独和大辞典」 では、「未満」 という意味だけ例示。
【unter: 前 1 ((空間的)) b) ((未満;数量的上限に関して)) ((3格と)) (weniger als) …に達しない数の,数値的に…未満で,…に達しない Kinder unter zehn Jahren 10歳未満の子供】
報告書ではやはり、数値を厳密に取り扱う必要があるため、「5歳未満児」 が正しいと思う。
前置詞1つで迷っているくらいだから、まだまだプロの翻訳家には道のりは長い。
まあ、言葉に敏感であるという、ポジティブな解釈をしておこうか。
(最終チェック・修正日 2008年10月28日)