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日本にいない昆虫の和名を検索して混乱した

翻訳で困るのは、対応する日本語の訳語が見つからないことだ

翻訳していれば誰でも遭遇することだし、何も私が悪いわけでもない。
それでも、お金をもらう仕事なので、うまく表現しなければと悩んでしまう。

インターネット検索で出てきた英語やドイツ語のHPを読んで、なんとかふさわしい意味になるように、漢字を選んで、訳語を作ることもある。
名詞や商品名ならば、とりあえずカタカナ表記にしておくが、それでも、全体の統一性が崩れる場合には、その部分が目立ってしまう。

今回は、
昆虫の和名がすぐには見つからず、更に複数例あって混乱した。

tobacco budworm という害虫だが、辞書では、「タバコバドウォーム(タバコの葉を食う害虫)」 となっていた。
ちなみにドイツ語では、"Tabakknospenraupe" であった。

ここで 「タバコ食葉性害虫」 とすると、種名ではなく、タバコの葉を食べる様々な害虫をまとめた、一般名になってしまう。
それに、学会が和名を提案していないのに、勝手に作ることはできない。

和名がなくても学名 Heliothis virescens はあるが、訳文中で tobacco budworm を学名で置き換えることはできない。

検索を進めると、日本貿易振興機構(ジェトロ)のHPにあった文書中に、「Oriental Tobacco Budworm(タバコガ)」 という似た名前を見つけた。

しかし、これの学名は、Helicoverpa assulta と、属名が異なっている。
ヤガ科タバコガ亜科の下にある属の違いだ。

また別に見つけた オオタバコガの学名は、Heliothis virescens のこともあれば、別の文書では Helicoverpa armigera と、不一致があるので使えない。

Heliothis virescens をオオタバコガとしているのは、なんと、私の勤務先の親会社が提携して運用しているHPである。
また、「オオタバコガの一種」としているHPも出てきた。

Heliothis virescens に変えて検索を再開すると、今度は 「ニセアメリカタバコガ」 とする論文が出てきた。
論文だから、この和名が正しい、あるいは提案されているというこ とだろう。

すると農林水産省のHPで、植物防疫法の規制を受ける昆虫類に、「ニセアメリカタバコガ Heliothis virescens 」 があり、最終的に確認できた。

こんなことで時間を取られるから、翻訳は時間的余裕がないとできない。

(最終チェック・修正日 2007年01月20日)


テーマ : 翻訳勉強
ジャンル : 学問・文化・芸術

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MarburgChemie

Author:MarburgChemie
製薬メーカー子会社の解散後、民間企業研究所で派遣社員として勤務していましたが、化学と語学の両方の能力を活かすために専業翻訳者となりました。

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